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なぜ協業型セールスが求められるのか 「クラシック・スタイル・モデル」セールスの問題点から読み解く

前回はエンタープライズ営業について述べました。今回からはエンタープライズ・インサイドセールスについて述べていきます。まず、最初に今後の企業活動においてエンタープライズ・インサイドセールスの導入が必要なのか、組織の機能面と市場や社会の変化というふたつの観点で考えてみます。

1)組織の機能面

  1. 協業型セールスの重要性 → 今回
  2. エンタープライズ・インサイドセールスのメリット

2)市場や社会の流れから求められる

 今回の記事から数回に分けて「1)-1」から順に、解説していきます。本稿では、「協業型セールスの重要性」について、従来型のエンタープライズ営業が抱える問題点から述べていきます。なお、インサイドセールスを導入した協業型セールスに対し、従来型のエンタープライズ営業を「クラシック・スタイル・モデル」と定義づけています。


協業型セールスの重要性

ファネル構造におけるインサイドセールスと営業の活動範囲
ファネル構造に対するインサイドセールスと営業(フィールドセールス)の関わり

 上図のポイントは、ファネル構造に対するインサイドセールス(IS)と営業(フィールドセールス:FS)の関わる部分が重なりを持つところです。お互いの役割は、完全分離ではなく、協力しながらパイプライン進捗を図ろうというものです。具体的な方法は、連載の中で詳しく述べていきます。現段階では、ファネルの進捗を協業して行うことができるという考え方もあるという程度に理解してもらえれば十分です。

たったひとりにマネージメント・ポイントが集中

クラシック・スタイル・モデルの問題その1

 自社と顧客の組織が複雑であるにもかかわらず、マネージメント・ポイントが営業に過度に集中する

 このモデルをソフトウエア開発や販売を行っている会社を例に問題点を説明します。大手企業向けの営業部門では、営業(フィールドセールス:FS)/セールス・エンジニア(SE)/テクニカル・エンジニア(TS)と分かれており、それぞれの部署にマネージャーや業務をまとめる業務課がいます。営業(フィールドセールス:FS)は、顧客の案件の進捗状況に応じてとりまとめる役割を担います。

クラシック・スタイル・モデルの組織イメージ

クラシック・スタイル・モデルの組織イメージ

 営業(フィールドセールス:FS)は、所属長の営業課長の協力を得ながらセールス・エンジニア(SE)のリソースやテクニカル・エンジニア(TS)のスケジュール調整、打ち合わせを行います。自社の中であっても、調整ごとを多く行うことが求められます。

 顧客側においても、日本の組織は担当者や部門長など体制が複雑で、かつ業務が明確に分担しきれていません。裁量が明確に分け与えられていないため、案件化してもストップしやすいです。いわゆる根回しや社内調整が必要というものです。そのたびに、営業(フィールドセールス:FS)は、自社内のリソースと調整しなければなりません。

大手企業の組織概念図

大手企業の組織概念図

 このように自社および顧客の他部門にわたる調整が営業(フィールドセールス:FS)に集中するのです。この構造の問題点は、あらゆる成功の可否が営業(フィールドセールス:FS)に帰結するため、営業にかなりの力量が要求されることです。翻っていうならば、営業(フィールドセールス:FS)の力量が低ければ、負ける可能性が非常に高いのです。
フィールド営業に業務が集中

ひとりの営業にタスクが集中

 ひとりの営業(フィールドセールス:FS)にできることには限界があるため、効率的かつ広範にカバーするには、営業(フィールドセールス:FS)に過度な負担がかからない体制が求められるのです。

SFAに客観性のある情報がたまらない

クラシック・スタイル・モデルの問題その2

 情報の精度と客観性の担保のリスクが大きい

 エンタープライズ・セールスは関係者が多い分、情報流通量も増えます。そのため、情報管理が非常に重要になってきます。

 従来のSFAでは、情報(顧客の担当者や上司や、状況など)を入力するのは、営業(フィールドセールス:FS)の仕事です。もちろん、セールス・エンジニア(SE)やテクニカル・エンジニア(TS)も情報入力をしますが、先に述べたように営業(フィールドセールス:FS)の情報が鍵となります。しかしながら、ただでさえ営業(フィールドセールス:FS)にオーバーフローの状態が恒常化している中で、まんべんなくこなすのは相当な難易度です。

 実際に、関係者が多くプロセスが複雑なエンタープライズほど、SFAに情報が入っていないです。しかも、入力精度を検証できない(精度が下がり、正確性が担保されない)ことが、現実にはよく起きています。なぜ、そういったことが起きるのでしょうか?それには、ふたつの理由があります

情報の精度が低くなる第1の理由:営業の過信と自己弁護を生み出しがちな報告体制

 営業の現場で、案件の報告会や上司の報告の情景を思い浮かべてみてください。上司も仕事が多いですから、報告業務はなるべく効率的に行いたいです。通常は大きな案件もしくはリスクが高い案件に時間をかけて報告を聞いて、そうでないものはさっさと済ませようとします。

 報告する側は、どうでしょう。やはり、同じようなもので、報告などで時間を割かれるよりは、ほかのことに時間を割きたいものです。「大丈夫?」と聞かれたときに、よほど問題がない限り営業は「大丈夫です!」と答えてかんたんに済ませようとします。ここに自己弁護もしくは過信の罠に陥る隙が生まれます。これが、第1のポイントです。

情報の精度が低くなる第2の理由:情報の客観性の担保が検証されない>

 お客様の情報の入力では、客観的な情報が求められます。では、客観的な情報とは何でしょうか。たとえばお客様が、製品・サービスについての仕様書、標準価格体系、技術的な質問について営業に聞いたとしましょう。これは通常であれば、具体的な検討に入ったことを示すので、案件の進捗を示す大きなポイントです。

 顧客が求めた内容は情報のWhatのパートになります。ではなぜ、案件が進むことになったのでしょう?その背景は何なのでしょう?競合の動きはどうなのでしょう?そもそも製品に対してポジティブなのでしょうか?これは情報のWhyのパートになります。このWhyが、抜け漏れや憶測、都合の良い解釈が入りやすいところになります。

 営業マネジメントをしている人であれば、WhatとWhyの情報の正確性の重要さは理解できるはずです。とくに、Whyには客観性も求められます。そのような点から、情報管理を営業(FS)だけに任せない体制づくりが求められます。これは、のちに詳しく述べますがエンタープライズ・インサイドセールス(EIS)と協業して活動すれば情報の客観性の担保は大きく改善できます。

 協業による営業の利点を説明するため、完全分業型(インサイドセールスとフィールドセールス)と訪問営業のみで行う手法の問題点をあらためて紐解いていきましょう。後者を、「クラシック・スタイル・モデル」と本連載では名づけます。

学び合う風土づくりや組織成長が望めない

クラシック・スタイル・モデルの問題その3

 組織として学びあう風土や仕組みを作ることが困難

 営業担当はふつう、複数の企業や案件を担当しています。もちろん、組織の人件費効率の観点から複数社を担当するわけですが、営業の教育およびスキル向上という点から見ても、メリットがあります。なぜなら、スキルは多くの案件に深く取り組むことで高まるものだからです。集中的に規模や業界が近い案件を複数展開することで、応用力を磨くことができます。

 また同一顧客であっても複数の案件を扱うことで、視野やマーケットを広げることができます。営業は1社に新規で入ったら、違う部署にも展開しようとするものです。それはエンタープライズ営業なら常識でしょう。自社の中で前例があれば、顧客の理解も得ることが早いですし、営業もTSやSEとチームをつくるのも早く対応できます。このように営業は、一度成功するパターンを見つけることができると、個人としての成長を描くことができます。できる営業は、ますますできるようになっていくというパターンです。

 しかし、成績が振るわない人はどうでしょう?あるいは、新しく営業に配属された人はどうでしょう?引き継いだ顧客との関係構築ももちろんできていないですし、先ほど述べたように顧客のSFAの情報精度は当てになりません。ひどい場合は、ほとんど有益な情報が入っていないということすらあります。前述のとおり情報の抜け漏れは生じやすいのです。前任者が営業成績を上げることができているのは、すべてが担当者の頭の中に入っているからなのです。

 また営業(フィールドセールス:FS)は一匹狼での行動になりがちです。営業の成績によって評価されるわけですし、常に高いプレッシャーのもとで仕事をしています。その環境下で結果を出しているわけですから、矜持もありますし組織への帰属意識やつながりは希薄になりがちです。

 従って、新入社員や転任してきた社員に引き継ぎをするとしても、最低限のことしか共有しません。自分もそうやって成長し、勝ち残ってきたのですから、強くするためにあえて突き放すというのが、トップセールスによるある種のトレーニングスタイルなのです。いわゆる「俺の背中をみて、ついてこい」というものですね。案件共有会議などの場があったとしても、ナレッジが共有される場となることはありません。しかし、いつまでもこの方法をとっていては、組織としての成長を求めることが非常に困難です。

 エンタープライズ営業は組織としての成長を求められています。新たな製品、サービスを提供していかなければならないのです。そのために、情報共有のシステムや前回でも言及したMA(マーケティング・オートメーション)を導入しています。しかしながら、システムのインフラを整えていたとしても、肝心の利用する側がこのような体制やマインドセットであれば、インフラの機能を使いこなせません。

協業が示す可能性

 ここまで見てきたクラシック・スタイル・モデル体制の問題点からも明らかなように、顧客コミュニケーション、情報管理、ナレッジの活用……どの側面から見ても複数体制での営業活動が望まれます。

 ここで示す協業型というのは、組織的に営業が動くかたちに考え方を変化させることです。その協業型の最適な体制として、協業型のエンタープライズ・インサイドセールス(EIS)を導入が必要なのです。

 エンタープライズ・インサイドセールスは終日内勤のため多くの案件を扱えます。オフィスワークのためSFA管理も集中的に行えるので、情報の正確性を担保できます。さらには、原則同じフロアにメンバーが集まりますから、ナレッジが集まりやすく、情報共有や組織成長を促します。

 効率や成果だけでなく、複雑な戦略の遂行や組織成長においても、エンタープライズ・インサイドセールス(EIS)と営業(FS)の協業型セールスはメリットが大きいです。次回は、協業型のエンタープライズ・インサイドセールス(EIS)導入のメリットを具体的に解説します。

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