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エンタープライズ・インサイドセールス営業の役割と効果

エンタープライズによるエンタープライズ(大手企業や公的機関)をターゲットにした場合のインサイドセールスについて、実践のポイントを解説していきたいと思います。前回は、日米のインサイドセールスの給与レベルが倍以上違うのは、インサイドセールスの役割の違いが大きいと述べました。つまり難度の高い役割をインサイドセールスが担っているため、高度なスキルを要求されるため、フィールドセールスと遜色ないレベルなのです。今回では、難度の高い役割を担うために、エンタープライズ営業とはどういったものなのかを説明します。

エンタープライズ営業とは

エンタープライズ営業とは、顧客組織、商材で以下の2点の条件を満たすように定義します。

顧客組織:顧客の企業規模の売り上げ、従業員数が大きく、売る側にとって、複数の部門の担当者、決裁者、役員を説得する組織。

商材:複雑かつ大規模なもの、顧客企業のインフラとなるような基幹ソフトもしくは全社に導入されるサービス。顧客企業のビジネスに大きく影響するため、導入の際に経営層の決裁、役員会や社長決裁が求められる。数年以上の単位で投資回収を計算する。

例えば、顧客企業の規模を上の条件を満たしていても、商材の条件を満たしていなければエンタープライズ営業とはここでは言いません。商材ですが、経理、人事などのシステムでも、一部門の担当者向けのものであれば、除外します。一方で、文具品などの購入は通常、エンタープライズ営業というイメージは持たないでしょうが、全社の購買を一括で切り替えさせるというのであれば、エンタープライズ営業になります。

エンタープライズ営業を、もう少し具体的に見ていきましょう。

顧客企業は、全社システムに関わるものでも、主管部門があります。ITシステム系では、以前ですとIT部門が実質的な主管部門でしたが、ユーザー部門が購買の意思決定に大きくかかわり、主管部門となることが多くなりました。

また、セールスフォースなどが展開するシステムはプラットフォームとなり、経営企画、営業、マーケティング、カスタマー・サービスなどの複数部門に関わるシステムを提供しているので、複数の主管部門に関わる提案をすることがIT企業系に求められます。

IT企業系だけでなく、企業にモノやサービスを提供するときにWEB経由での受発注する仕組みは人事、総務、営業とほぼあらゆる部門に関わってきています。比較的、工場の生産系はネットとはつながっていなかったので、いまだにFAXでのデータのやり取りがまだ多いですが、これも5GとIoTの普及とともに変わっていくでしょう。

複数の主管部門の調整だけでなく、資産になるか経費になるにしろ、数千万、数億単位の投資になれば、会社の経営計画や投資計画に織り込んでもらうようにします。そうなれば、経営企画および役員、社長にも話を通すことになります。また、いよいよ契約をするかどうかというところになれば、購買、法務も関わることになります。

パイプラインの構造をファネル状に描きますが、エンタープライズ営業の作業工程は、むしろ、工程の後半から複雑になり成約するまで調整することが多くなります。

案件の進捗と案件の複雑さ

エンタープライズ営業の担当者の責任は大きく、かつ労力を要します。売り上げの規模が大きいので、成功しなければならないというプレッシャーは相当のものになります。したがって、エンタープライズ営業は、その会社の営業部員でも優秀かつ経験豊富であり、担当顧客との信頼関係がある人が担当しています。

また、エンタープライズ営業は、顧客企業への訪問が原則です。そして、顧客との信頼関係構築のためには、特段の用件がなくても訪問することを奨励しています。なぜなら、顧客企業に訪問し、何気ない会話の中から、新しいプロジェクトの話や、発表する前の人事情報を得ることもあるからです。アポなしで訪問して、「挨拶に来ました」というのは常套句でしょう。

これが伝統的なエンタープライズ営業の手法ですが、多くの企業ではこういった営業手法をすべてのエンタープライズ顧客企業に行うことが、以下の3つのマクロ的な要因によって困難になってきました。

  • 企業の利益構造を維持するための人件費削減もしくは一人当たりの生産性向上が求められるため、営業の効率を求められる
  • 顧客企業自体が、新規事業もしくは事業構造を大きく変えるために、従前の取引関係を見直すことになると、今までの取引関係や担当営業が築き上げたリレーションが役に立たなくなる
  • デジタル世代が、顧客側も売り手側も担当の主流となりつつあり、そもそもトラディショナルな営業手法に馴染まない。またそれぞれの企業側も新しい世代に業務引継ぎを行う余裕もないし、あっても上手くいかない。

そこで、多くの大手企業でも、マーケティングに新規案件を見つけさせるためにということで、マーケティング・オートメーションを導入し、試験的にインサイドセールスも導入しています。続いて、マクロな視点ではなく顧客側の視点【買う側】の視点で見ていきましょう

トラディショナルなエンタープライズ営業からマーケティングと連動したモデルへの取り組み

顧客は購入する前の情報取得はほぼインターネットで収集できます。

つまり、競合製品・サービスを簡単な比較は売り手側の営業を介さなくてもできるわけです。では、顧客がネット経由ではなく人を介在してでも欲しい情報とは何かといえば、2つのケースが考えられます。

  1. 製品・サービスの選定などを終えて、導入することが決まり、最後の段階の評価・検討を行うというステージでコンタクトするケース。
  2. まだ検討段階だが、導入の効果などが見極めることがネットの情報だけでは見極めることができないので、検討初期の段階でコンタクトして説明を聞くというケース。

売り手側としては、2)の段階で顧客とコンタクトできることが望ましいです。従来のエンタープライズ営業では、ネットで情報集していることは把握できないので2)の段階なのか1)の段階なのか区別もつけようがなく、どちらのケースかは、顧客と会ってみるまではわからないということですから、当然非効率ですし失注する可能性も高くなります。そういったリスクを回避するためにも、デジタルマーケティングやオフラインマーケティングを担当しているマーケティング部門との連携が求められ、営業システムと連動するツールとしてマーケティング・オートメーションが導入されるようになりました。

さらに、インサイドセールスが、検討段階の初期の段階(リード)を育成するというモデルが喧伝されるようになり、大手企業のエンタープライズ営業でも、試験的に導入されるようになっています。いわゆる「ザ・モデル」になります。

案件の進捗と案件の数

「ザ・モデル」は、マーケティング、インサイドセールス、セールス、さらにはカスタマーサクセスと分業体制をとることとして、理解されています。「ザ・モデル」の著者の福田氏も言っていますが、営業プロセスの分業体制は、それぞれの会社やサービスごとに適切なものを見つけるべきだといっているのですが、多くの企業では、このまま導入するということをしてしまい、導入後にうまくいかないで苦労している会社が多いのも事実です。

もともと、分業をする、あるいは従来疎遠だった部門間で協力するというのは、難易度が高いです。そういった点からしても、思うように進まないというのは、どの会社の営業部門でも起きますが、エンタープライズ営業部門は、さらに難易度が高いので、うまくいかないケースがほとんどという状況になります。

具体的には、以下の3点が直面する課題となります。

  • 顧客側の関連部門や意思決定に関わる人が非常に多いため、パイプラインのステージとリードのステージの切り分けが困難。そのため、インサイドセールスとフィールドセールスの間で、案件が行ったり来たりする。
  • 顧客の複数部門の状況を一人の営業でフォローしきれない。案件の進捗するなかで、経理、購買、主管部門の状況を一人でカバーするのは、高度の熟練したスキルを要する。
  • 顧客の部門によってセールスステージ(購入への意欲度合い)が違うことが多々ある。例えば、主管部門は積極的だが、購買は消極的であるなどはよくあること。

こういった状況になると、大方の場合は上流工程側のマーケティングやインサイドセールス側の分が悪くなります。なぜなら、実際に顧客に会った営業(フィールドセールス)が得ることができる情報も多いですし、何よりも会ったときに顧客から言われたというのは説得力があるからです。

また、インサイドセールスの担当者が、営業経験が浅い社員もしくは外注先であれば、力関係に差があるので、益々悪い方向に進みます。本来は、対等な分業関係のはずなのに、案件の品質に対する判断が一方的にされるわけですから、相互の連携は悪くなり、相互不信に陥ります。こういったことを避けるための方策として、全体のプロセスの統括責任者であるCRO(チーフ・レベニュー・オフィサー)を置くことや、インサイドセールスにベテランの営業を置くということが奨励されます。CROを日本の大手企業でおけるかどうかというのは、まったく別次元の経営問題になるので、実践的かどうかはここでは議論しません。ベテランの営業を置くというのは、やろうと思えばできますし、有効な手段ですが、意外と日本の大手企業にはハードルが高いようです。これは、組織文化の問題なのですが、やはり営業は、顧客のところに行ってこそ営業だという価値観が強いですので、顧客のところに行かないとは、第一線から外れるという意味合いが強い。つまり、人事評価や社内の評判からインサイドセールスに充てることができないようです。

また、たとえベテラン営業をインサイドセールスに配置したとしても、リアルに顧客と会ったときの情報を優位に置くということがなされる限り、分業による連携の課題を解決するようことは困難なままです。

そこで、提案したいのが、エンタープライズ・インサイドセールス営業です。

エンタープライズ・インサイドセールス営業とは

協業型インサイドセールス

エンタープライズ・インサイドセールスは、図にあるように、コンセプトとしては非常にシンプルです。次回は、このエンタープライズ・インサイドセールスについて、詳しく説明します。

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