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事例紹介

日本電気株式会社(NEC)様のコンサルティング事例

今回の記事では、GIJのコンサルティングを採用いただき、3年に渡り営業デジタルシフトを推進されてきた企業の事例をお送りします。お話いただいたのは、日本電気株式会社の辻宣之様、島田昌治様。2020年度から22年度までの3年間の取り組みや、その結果生じた成果など、非常に示唆に富んだお話をしていただけました。

【本記事のサマリー】
・GIJは2020~2022年度の3年間にわたり、NECのセールス/マーケティングのデジタルシフト活動を支援
・プランニングやプロセス設計、KPI策定からトレーニングまで、幅広い領域で伴走支援を実施
・チームセリングの成功モデルの確立 / デジタルシフトの重要性やカスタマージャーニーに対するメンバー理解の促進 / 23年度以降の活動推進のための土台作り / など様々な成果が得られた

―まず初めに、GIJと一緒に仕事を始めた2020年当時と、2023年現在それぞれの役職と仕事内容のご紹介をお願いします。

辻様:2020年当時はIMC (Integrated Marketing Communication) 本部内のデマンドジェネレーショングループのシニアマネージャーを務めていました。仕事内容としては、営業のデジタルシフトを目的に、営業グループの人たちの戦略を聞きながら、コロナ禍で客先に行けなくなった営業がオンラインでセールスできるように働き掛けを行いました。その際、主な手段はインサイドセールスでした。2023年4月現在はGTM( Go To Market )戦略統括部のデジタルセールス戦略グループのディレクターを務めています。

GTM戦略統括部 デジタルセールス戦略グループ ディレクター 辻宣之 様

島田様:私も同じくIMC本部内のデマンドジェネレーショングループに所属し、マネージャーを務めていました。業務内容としては、営業デジタルシフトを進めていく中で、インサイドセールスの実行と、セールスイネーブルメントの開発・実行、社内コミュニティの強化を担当していました。現在はGTM戦略統括部のデジタルセールス推進グループのシニアプロフェッショナルとして、デジタルセールスを推進しています。

GTM戦略統括部 デジタルセールス推進グループ シニアプロフェッショナル 島田昌治 様

―社内コミュニティとはどのようなものですか?

島田様:営業デジタルシフトを進める、営業やマーケティング部門の活動事例やナレッジを定期的に全社に展開するものでした。具体的には、営業DX推進者会議を3か月に1回開催して、関係する営業、マーケティング、製品サービス部門などの方にご登壇いただき、お話いただきました。GIJからも何名かご登壇いただきましたね。

2020-2021年度の取り組み:コロナ禍の状況を打破すべく、セールス/マーケティング活動のデジタルシフトの実行と啓発を推進

―その節はありがとうございました。それでは、これまでGIJと一緒に行ってきた取り組みについて振り返ってお話をお聞かせください。まず、2020年度から21年度にはどのような取り組みをされましたか?

辻様:前提として、それ以前からインサイドセールスを用いて、営業が工数の関係で手を出せないホワイトスペースを攻略するスキームづくりを営業部隊とともに進めていました。

そんな中でコロナ禍になって、営業が客先に通えない状況になり、IMCでもリアルイベントが開催できなくなりました。当時はまだウェビナーも一般的ではなかったのですが、IMCでは急遽デジタルシフトを推し進めて、オンラインセミナーへ切り替えていく活動を行いました。そういった経緯で、オンライン化やデータ活用のノウハウの蓄積が営業よりも少し進んでいたため、そのナレッジを生かして営業活動のデジタルシフトを進め、コロナ禍の状況を打破しませんか、といくつかの営業部門にお声掛けをしたのが2020年度でした。

お声掛けするにあたってはデジタルに理解のある部門を優先しようと思い、複数の企業に対して商材を売り込むテリトリー型の営業であればデジタルとの親和性が高いだろうと考えたことから、当初は製造業を対象にそのやり方で営業を行っている部門をピックアップしました。

それらの部門に対して、コロナ禍で戦略が停滞してしまっている状況に対して、デジタルマーケティングを活用して広く網を張り、インサイドセールスで絞り込んでいくやり方を提案しました。その具体的な方法・目標設定・人的リソースの準備の仕方などの検討にGIJに参加してもらって、それぞれのプロジェクトで何をしたいのかを読み取り、伴走する活動を開始しました。

そういった活動の形が見えてきた段階で、それまでABM型で営業を行っていた部門からも、デジタルセールスを自分たちのスタイルに取り込んでいきたいという話がありました。そこでABM型の営業モデルでのデジタルシフトについても、GIJの支援を受けて、一連のフレームワークに沿いながら、一緒に立ち上げていきました。

島田様:たしかに、プランニングの4ブロックスやそこから派生した10ステップといったGIJのフレームワークに基づいて、取り組みを進めていきましたね。

GIJが実際に使用しているフレームワーク:営業組織変革の10STEP

辻様:こうした取り組みを通して、デジタルセールスの営業戦略への組み込みが進んでいきました。さらに、営業自身がインサイドセールスをやりたいという場合にはトレーニングも実施してもらいました。

島田様:その点について私からもお話すると、まず20年度は営業デジタルシフトの全社展開に向けて、主にインサイドセールスの実行と、営業部門への啓発の役割を担っていました。

営業部門はフィールドセールスを120年以上続けてきた歴史があり、当初はデジタルシフトに対して取っ付きにくい印象を持たれたり、意義が理解されていなかったりと、その重要性の啓発が必要な状況でした。20年度にはISRのトレーニングを内製で立ち上げていたのですが、こういった状況を踏まえて、GIJ からインサイドセールスだけでは不十分ではないかとアドバイスを受けて、デジタルマーケティングやインサイドセールスマネジメント(ISM)などデジタルセールス全般に関するトレーニングも立ち上げていきました。

その過程で、どうしても自分たちのスキルでは対応しきれない領域があり、それらのトレーニングについてはGIJに依頼しました。これが21年度のことです。GIJにはISM向けの研修をリアルタイムで実施してもらったほか、より効率的に学習できるように、デジタルセールスに関する様々な分野についての研修コンテンツを動画で作成してもらいました。さらに、営業部門の幹部にデジタルセールスの必要性を啓発するため、ワークショップも実施してもらいました。

また、時期が前後しますが、2020年9月から開始した営業DX推進者会議では、どんなナレッジを共有すべきかなどの会議のシナリオへのアドバイスをGIJから受けたり、GIJメンバーの経験を会議内で展開してもらったりもしました。20年度と21年度に私が携わった中でGIJとともに進めた主な取り組みは以上です。

辻様:20年度はもう一つ、それまでのGIJの支援内容をプレイブックとしてドキュメントアウトしてもらい、これまで足で稼いできた営業たちをどのようにDXさせていくのか、プロセスをまとめる作業も進めてもらいました。その際は当社の事情に合わせて、社内で導入しているSFAの活用を前提に、社内の複雑な営業体制も加味して、営業デジタルシフトのプロセスやフレームワークをまとめてもらいました。我々からすると、最初はGIJに伴走してもらって特定の部門のデジタルシフトを立ち上げていたのが、プレイブックを参考にしながら自分たちでも新たな部門を立ち上げて行けるように育ててもらったと考えています。

2022年度の取り組み:セールスシナリオやプロセスの作成、役割分担からKPI定義まで幅広く策定

―ご説明ありがとうございます。続いて、22年度についてもお話いただけますでしょうか。

島田様:まず、マイクロバトル(後述)とDXオファリング商材のテリトリアプローチの対応については、GIJにどっぷり入ってもらいました。どちらも、デジタルセールスの推進に伴う生産性の向上や業務効率の改善を目的に、販売プロセスの定義・役割分担・KPI定義などを作成するにあたって、GIJに入ってもらったかたちです。当初はマイクロバトルという名前で製造業にセキュリティの商材を販売するプロジェクトを行ったのですが、その時の成果や反省を踏まえてプロジェクトの範囲を拡大したのがテリトリアプローチになります。

具体的には、複数商材を売るシナリオの作成や、ナーチャリングプロセスの作成といった、デジタルセールスにおいて重要な部分で支援を受けました。作成したプロセスに基づいて、23年度以降の活動を推進していけるかたちが出来上がったと思います。

辻様:ビル顔入退についても一緒に取り組みを行いました。これはビル管理者向けに新たに開発したクラウドでの顔入退管理ソリューションなのですが、新規顧客開拓に向けてデジタルセールスとの親和性が高いだろうとDI本部からGIJにお声掛けしました。

実際には、デジタルセールスを進める以前に、製品部門であるDI本部が定義した機能軸のCS/VPを見直す必要があると分かり、GIJのフレームワークも用いながら顧客課題にフォーカスしたものに修正していきました。結果としてソリューションで訴求する価値に応じたターゲッティングが可能になり、デジタルシフトの活動に接続できるようになりました。この点が本件の支援のポイントだったと思います。

また、初めて営業部門とマーケティング部門共同でアカウントプランの策定を行いました。従来は、マーケティングはリードを作って渡すだけで、そのリードをどう扱うかはセールスに任されるというように、マーケティングとセールスは分断されていました。目標についても、マーケティングはリード数やイベント集客が、セールスは受注や売上が、それぞれ別の目標として設定されていました。

しかし、営業デジタルシフトによってマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスでのチームセリングを始めた結果、一つのストーリーに則って複数の部門が協力するようになったことから、部門間で目標感を合わせやすくなりました。そこで、GIJのフレームワークの一つであるブレイクダウンシートで図示しながら、営業の予算を分解してチームセリングに参加する部門のそれぞれの役割や目標に落とし込んでいき、チームセリングを実現させる活動を行いました。

島田様:関連する反応として、テリトリー対応でデジタルセールスを行うことはイメージしやすいけれども、アカウント対応でデジタルセールスというと、どのようにアプローチしていいか分からないといった声が聞かれました。その意味では、プランニングの仕方やシナリオの作り方を伝授してもらったのは大きかったと思います。

―おっしゃる通り、これまでアカウントプランは営業部門独自で策定されていたため、マーケティングと一緒にやれることをご理解いただいたのは大きかったですね。

島田様:最近、社外の方と話した時にも、アカウント対応でのデジタルセールスをどのようにやっているのかという点に強く関心を持たれました。そう考えると、アカウント対応を標準化してデジタルで対応できるようになったことはGIJの力が大きかったと思います。

導入の決め手は、インサイドセールスの豊富な知見

―どうもありがとうございました。それでは、改めて20年度当時を振り返っていただき、GIJを導入いただいた決め手を教えてください。

辻様:もともと営業部門にコロナ禍の状況を打破するためのデジタルシフトを提案するにあたって、最もキャッチ―な手段としてインサイドセールスを押し出そうとしていたのですが、水嶋さんにインサイドセールスの活用や有効性に関して当社でお話してもらった際に、豊富な知見をお持ちだと感じたことがきっかけでした。

―これまでの取り組みを要約すると、どのような点がポイントとなるでしょうか?

辻様:コロナ禍で活動が停滞した営業部門に対して、その打開策としてインサイドセールスを提案したこと、そこからチームセリングの実現や、SFAの定着などを通してデータドリブンな営業活動の実現を目指したことがポイントでした。

―取り組みを進める中で特に大変だったことはありますか?

辻様:我々はインサイドセールスとテレマーケティングの違いを理解していましたが、それを営業に理解してもらうところから苦労しました。また、ABMやテリトリーといったNEC営業のそれぞれの戦略に対してデジタルシフトで効果がありそうだと期待を持ってもらうことも苦労しました。これまではその点が十分ではなかったのですが、ある意味でコロナ禍がよいきっかけになりました。

島田様:同じく、営業デジタルシフトの理解がなかなか進まなかったことが一番大変でした。特に営業部門の理解が得られず、思うように進まなかったという印象があります。インサイドセールスはテレマーケティングだ、営業とは違うものだ、新規顧客開拓にしか使えないといった、我々の思いとは異なる理解のされ方が根強く、その点で苦労しました。

カスタマージャーニーに対する理解が進み、デジタルシフトの取り組みも加速

―取り組みを通じて、組織やメンバーにどのような変化や成果が生まれましたか?

辻様:カスタマージャーニーに対する理解が進んだと思います。以前の営業はSALのようなマーケティング用語もほとんど知らない状態でしたが、カスタマージャーニーで顧客を醸成するという考え方の理解が進みました。その結果としてマーケティングを含むチームセリングが意識できるようになり、マーケティング施策が商談にも活かされるようになってきていると感じています。マーケティング側から見ると、自分たちの活動が売上に繋がってほしいという思いはありますが、それよりもNECの営業プロセスを変革していきたいというもっと大きな目的があり、そこに向けた変化が営業部門に生まれてきたと思います。

島田様:当初は理解が進まず大変でしたが、少しずつ成果が出てきて、それがうまく全社に展開される中でデジタルセールスの理解も進んでいき、実際に取り組む組織も広がっていきました。

具体的な数字を挙げると、(社内ナレッジ共有を目的とした)営業DX推進者会議では、2020年9月~2023年3月の期間に11回開催して、80の事例を共有いただきました。のべ3,511人に参加していただき、毎回250~300名の参加がありました。85%以上がリピーターで、そういった方々が賛同者としてデジタルセールスの推進を担ってくれていたのだと思います。

また、セールスイネーブルメントについて、2022年度で動画の研修も含めて900名の受講者がいました。2020年度は450名であり、3年間で倍増した計算になります。

デジタルセールスの啓発が進んできたと実感できたことと、デジタルセールスに特化した組織が登場しはじめて、インサイドセールスが組織の中で当たり前に組み込まれるようになったことは、デジタルセールスの理解が進んだという意味で大きな成果だったと思います。

チームセリングの重要性を理解してもらえたことが大きな成果

―当初の期待は達成できましたか?

辻様:チームセリングの成功モデルを作るという一定の達成はできたと考えています。ただ、これで終わってしまっては意味がなく、進むにつれてやるべきことが増えていると感じています。具体的には、営業部門の自走、ISRの一元管理やリソース提供の機能、ISRの育成、全社展開のコミュニケーション方法などがあり、それに対応するための組織強化を毎年行っています。

―取り組みの一番の成果はなんでしょうか?

辻様:やはり、チームセリングの重要性を理解してもらえたことだと思います。

―GIJと一般的なコンサルとの違いや使い分けをどのように感じたか教えていただけますか?

辻様:我々は自分たちを営業プロセス変革者だと認識しているのですが、フレームワークで整理された答えをもらうのではなく、我々自らがどんな考え方でデジタルシフトを広げていけばいいのか、変革者としての立ち振る舞いを身に付けさせてもらえたことが、一般的なコンサルとは異なる点だと考えています。

―GIJはどんな企業におすすめできるでしょうか?

島田様:何かを新しく始めるうえで、自分たちではできないプランニングやプロセス作成などを、コンサルティングで活用するのがよいと思います。ただし、業務をやってもらうというよりは、業務をやるための知恵を授けてもらい、スキルを高めてもらえる存在だと思います。厳しいご指摘もしてもらえて有難かったです。例えば、基本的なことですが、施策を進めるうえで、目の前のことだけでなくゴールを見据えてプランニングをする重要性を繰り返し指摘してもらえたことは、振り返ってみると有難かったです。

―貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

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