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事例紹介

ソフトバンク株式会社様のインサイドセールス導入事例

グローバルインサイト合同会社(以下、GIJ)がソフトバンク株式会社(以下、ソフトバンク)の法人マーケティング本部のコンサルティングに入ったのは、2018年のことだった。今回は、当時立ち上がった法人マーケティング本部にフィールドセールスのトップセールスとして参画した原田博行氏に、ソフトバンクにおける過去・現在・未来のインサイドセールスとデジタルマーケティングをテーマにインタビューを行った。インサイドセールス導入の背景や、GIJの強みをはじめ、幅広い話題について語っていただいた。 

(聞き手:水嶋玲以仁) 

目次
インサイドセールス導入の背景
GIJとの協業の価値
インサイドセールスとデジタルマーケティングの連動
会社への実績面での貢献
フィールドセールスとの協業
法人マーケティング本部に求められる役割
「一緒にビジネスをやっている」というお客様本位のマインドへの変化
法人マーケティング本部の目指す姿
変化し続けようとするソフトバンクのカルチャー
楽しく働くことの実現を目指して
インサイドセールスとフィールドセールスの関係性の変化

 

原田 博行 氏
ソフトバンク株式会社 法人事業統括 法人マーケティング本部 副本部長
【経歴】
電力系通信事業者を経て日本テレコム株式会社(※)へ入社。
20年以上に渡り一貫してB2B直販営業を経験。国内、国際通信はもとより、
大企業から中小企業向けまであらゆる規模及び産業の課題解決をITで行うソリューション提案を実施。
2018年10月にインサイドセールス部門を立ち上げ、その後デジタルマーケティング部門を担務し、本年4月より両部門を統括。(※現:ソフトバンク株式会社)

 

インサイドセールス導入の背景 

まず過去のところからお話しすると、ソフトバンクが今まで法人事業をやっていた中で、特に力を入れていたのはフィールドセールスなんですね。B to Bはやはり、人の力で説得をするとか、いろいろなフェーズにおいて人の力を活用してビジネスを伸ばしていたこともあり、非常に営業の強い会社として認知もしていただいていたと思います。 

ただし、昨今のIoTや5Gなどが示すようにIT業界は技術革新のスピードが速く、ソフトバンク自体も自社のポートフォリオ、いわゆるビジネスドメインをどのように変えていこうかと検討していました。ソフトバンクは、Beyond Carrierという成長戦略を掲げ、従来の通信事業を基盤に幅広い産業分野において革新的なサービスを提供することで、さらなる成長を目指しています。最近はデジタルトランスフォーメーションという言葉がよく聞かれますが、そういった領域までしっかりとB to Bのお客様とのビジネスを作っていこうと決めました。そうした動きの中で、例えば営業の更なる変革、マーケティングの変革などを通じて、自社を変えていくことを目指し、2018年に法人マーケティング本部という部門が、従来のプロダクトや事業戦略の部門から独立して設立され、その年にインサイドセールスもスタートしていきました。 

そもそもソフトバンクにはインサイドセールスの母体となるコールセンター的な部門があり、労働集約型でお客様の要望を受けていましたが、プロアクティブかリアクティブかというとリアクティブに、対処療法的に動いているものでした。そういった状況でインサイドセールスを導入するにあたっては、どのようなポイントから取り組んでいけば確実に成果が得られるのかという点を重視しました。成果というのは我々のビジネスの発展のことでもあるのですが、特に重視したのはお客様の成功や、お客様にとっての心地良さだったので、自社独自の、我流は少し違うだろうと考えました。そんな中で私が着任する直前に、とある方の紹介を経てGIJさんに出会いました。会社を変えよう、その中の一つとしてインサイドセールスというファンクションを導入しようというタイミングで、我流ではなく正しいやり方といったものを求めてGIJさんに協力してもらうことにしました。 

水嶋さんに来ていただいて、まずは今までリアクティブなやり方でお客様からの問い合わせを受けていた組織をどうプロアクティブに変えていくのかが大きな課題でした。また、お客様の要望や課題を我々のソリューションでどのように解決していくかということに関しては、大企業と、中堅・中小企業のいわゆる1対nのところのテックタッチの部分を含めて、それぞれ効率的なやり方をある程度教えていただき、それを基に実践していきました。 

  

GIJとの協業の価値 

GIJが入った後で大きく変わった点や効果があった点はございますか? 

一番の大きな点は、第三者の客観的な評価や判断を、新たに立ち上げた組織の考え方の中に取り入れられたことだと思っています。私もずっとフィールドセールスだったので、この会社の中で、営業とはこういうものだという考えをある程度持っていたという自負はあります。しかし、仕組みで回していくような新しい営業のやり方として、どれが本当に正しいのかという答えを求めていました。 

その点で、水嶋さんに入っていただいて、インサイドセールスとはこういうやり方なんだよ、こういう方法もあるんだよという一つのフレームワークを示していただいたことで、それに従事するメンバーも納得してくれた。上司だけではなく、水嶋さんも言うのであれば、確かに正しいのだろうというふうに、素直にそのやり方を認めて、自分たちの動き方を変えられたという点では非常に大きいのではないかなと思います。 

―なるほど。GIJという外部のベンダーを使って客観的にこれは正しい方法なのであるということを理解させるという位置づけで使ってくださったということなのですね。これはある意味正しい使い方ですよね。 

おそらくGIJ含めて外部の方々と上手く仕事をする仕方として、彼らから学ぶことも重要ですが、客観的に答え合わせをして、自分たちの進んでいる方向や地図における現在地のようなものを確認することが、私は一番だと思っています。 

 

インサイドセールスとデジタルマーケティングの連動 

―ありがとうございます。ところで、取り組みを始めた2018年当時はデジタルマーケティングとの連携が課題として残っていましたが、現在に至るまでの間にデジタルマーケティングも原田さんが管轄するようになった経緯を教えていただけますか? 

デジタルマーケティングは2020年から見るようになりました。というのも、どれだけインサイドセールスの動きを良くしようとしてもその前段階からお客様の体験は始まっているため、上流からきれいに水を流さなければ、下流でどれだけ頑張っても、濁った水は濁ったままになってしまう。そこを一気通貫で見ることが重要だと考え、デジタルマーケティング側がインサイドセールスと一緒に動けるように直していこうと取り組みました。 

―デジタルマーケティングとインサイドセールスを統合するのは理想だと思いますが、両方をマネジメントすることにご苦労なさった点はありますか? 

インサイドセールスについては、基本がセールスなので、自分が持っているケーパビリティを生かすことができ、メンバーに対する共感のスピードも速かったです。同じ境遇、同じ時間を過ごしたことがあるという経験はメンバーの誰しもが持っているので。 

一方で、デジタルマーケティング側で非常に難しかった点は、セールスの経験がない人も当然いて、ビジネス全体を見たことのある人が非常に少ないということでした。よくある話ですが、MQLSQLなどマーケティング用語は使えても、その先にいるお客様に対してちゃんとしたバリューを届けているのかという点――例えばなぜここまでコンテンツのクオリティを上げなければならないのか、なぜこのキーワードを使わなければならないのかといった点――については、ビジネス感覚のズレが生じてしまい、PDCAを回すことが非常に難しかったですね。これはおそらく今も試行錯誤しているところだと思います。PlanDoはできるのです、型通りにやれば。ただしCheckAction、例えばCheckでは、お客様の反応や、お客様がどのような印象を受けて行動変容に至ったかという点にどれだけ意識を持てるかというと難しいです。 

セールスの場合は当然、失言をしてしまった、余計なメール送ってしまった、怒らせてしまったといった場合に、お客様のリアクションをものすごく意識する組織です。一方でマーケティングの場合は、例えばwebサイトで何かを掲示しました、メールを流しましたといったように、行動に対して一定の程度ルール付けがされるため、生のリアクションを得た経験を持つ人が少ないです。そういったリアクションを本当に自分たちの行動に生かしていくためには、やはりセールス的に、プロセス全体を見て、自分たちはどうしてこういう仕事をやっているのか、というところまで立ち戻らなければ理解されにくいという点に、まだ苦労しているところです。 

―デジタルマーケティングとインサイドセールスを両方見ることで成果が上がっている部分はどのようなところでしょうか? 

成果が出ている点でいうと、まず、コロナ下で各社が半ば強制的にデジタルシフトしたため、デジタルマーケティングも営業と同じ位置づけになったことですね。今まではフィールドセールスがいたため、デジタルマーケティングでのコンテンツに対するリアクションが薄かった面もありましたが、例えばウェビナーやそこで得られるアンケートの情報がリアルタイムに入るようになりました。 

そうすると、いい内容だったものはお客様から直接反応が得られることもあります。加えて、そうしたコンテンツを使ってインサイドセールスがお客様とコミュニケーションを取って、あのウェビナー良かったよ、このメールのホワイトペーパーはすごくお客様が喜んでいたよといったかたちでフィードバックをもらうことができるようになり、やっとフィードバックループが回り始めた。ある程度フィードバックが得られるようになってきたというのは大きいですね。 

 

会社への実績面での貢献 

―可能な範囲で、売上や利益目標などの具体的な成果を教えていただけますでしょうか。 

大企業向けのインサイドセールスでは、大きな変化として、難しい商材や、複数の商材を組み合わせたソリューションの取り扱いを始めました。1案件あたりの単価が大きくなったことで、2019年以降、前年比100%以上の収益増加を続けています。 

―100%以上ですか! 

それくらいチャレンジングな目標を設定しているので。 

―開始当初は、基本的に通信の派生で売れるPCなど、1案件あたりの金額としてはそれほど大きくなかったということですよね。 

はじめは大企業向けも中堅・中小企業向けも、どうして我々がこういう仕事をやり始めたのかというwhyの部分を明確にすることを重視していました。下手をすればテレセールスだと思われてしまいそうなところを、そうではなくてセールスをデジタルトランスフォーメーションしてお客様の体験を変えていくための取組なのだというwhyを強調するために、whatの部分はシンプルにする必要がありました。ついつい難しい商材でやってしまうと、上手くいかないなとか、お客様から全然反応ないぞといったかたちで、心がくじけてしまうと思ったのです。そこでスタート時の商材はやりやすいもの、わかりやすいもの、誰もが理解しやすいものから始めました。 

そのうち、whyの部分、自分たちは何のためにいるのかという目的意識や使命感みたいなものがしっかりしていけば、もっと会社に貢献していこう、という話に変わっていくわけです。 

―人員がそこまで増えているわけではない中での成果ということは、1人当たりの売上や案件の数が変わってきているわけですよね。どちらかというと、案件の数以上に1件当たりのディールが変わっているということですね。 

そうですね。2019年頃から、例えば大企業向けのインサイドセールスでは、フィールドセールスが普段会っている人たちを対象に空いている時間に深耕して案件を作っていくのではなくて、今まで会っていない人たちをデジタルマーケティングであぶり出した上でコンタクトを取ろう、ニューパーソンを見つけようという動きにだんだんと変わっていきました。 

通信事業だけだと、会っているお客様側の窓口の方々との案件はおおよそ見えています。それが、違う部署の人たちとお会いできると、今まで見えなかった案件がけっこう見えてくるのです。普段コツコツとフィールドセールスが見つけに行くようなスピード感よりも速いスピード感で、大きめの案件を一気にポンと見つけられたり、もしくはその関係性を構築することができたりしたのではないかなと思います。
 

フィールドセールスとの協業 

2020年にデジタルマーケティング側を主に見るようになっていたので、いろいろな営業本部に、これまでこういう成果が出たから、お客様のメールアドレスを法人マーケティング本部として扱えるように開放してくれないかという話をしました。今までは、限られたメールアドレスしか扱えませんでしたが、全本部と握ってそれらを開放してもらい、アローリスト(メール送付許可リスト)のメールアドレスを拡大してデジタルマーケティング側の自由度を増やすことで、2020年からフィールドセールスとも協業するスタイルに変わってきました。 

―すごいことですね。拙著『実践営業デジタルシフト』の中で取り上げたソフトバンクの事例は取組の初期段階で行っていたインサイドセールスの認知を広げるための活動が中心だったと思うのですが、直近の、例えば今年度の計画を立てる時に、各営業本部との合意はどのように進められたのですか? 

大企業と中堅・中小企業で少し違っています。大企業側の領域は、お客様のIT投資に大きく差がある状況にあります。そこで今年度は可能な限り、新しいお客様とのオポチュニティを見つける方向で進めていて、数字を作ることよりも、今まで会っていなかった人たちとの案件を作ることに特化しています。実際に、それに応じて結果がついてきて、フィールドセールスへトスアップする案件数も伸びてきています。 

お客様も、アフターコロナを見据えた動き方を始めています。従来ITを積極的に導入していなかった人たちがPlanからDoに、実際にベンダーさんと話してみようと動いているので、新しい案件は出てきていますね。

      

法人マーケティング本部に求められる役割 

―ここから現在の話に入りますが、2021年6月に開催された法人事業説明会では、法人部門の今後の戦略やビジョンについてアナウンスされましたが、その中で原田さんのチームや組織が果たす役割や期待値はどのようなものでしょうか? 

ソフトバンクがこれから牽引していくDX、デジタルトランスフォーメーションにおいて、我々の仕事の一つは、データを使ってビジネスを変革していこうというお客様を支援することです。ソフトバンクと一緒に何かをやってみようというお客様の興味を引き出し、そしてそういった興味からきちんと需要を創出するというように、もやっとしたものを形にしていくという仕事もしていかなくてはなりませんね。 

今年度は、私の直接見ている部署と、マーケティングコミュニケーションと呼ばれるような、ブランディングやプロモーションに取り組んでいる部署がきちんと連動しながら、ソフトバンクはどんなことができるのかをもう少し対外的に理解してもらう、認知をもっと広げていかなければならないかなと思っています。これが一点目です。 

もう一点は、インサイドセールスのようなお客様とコミュニケーションを取る社員は、自社のDXを示す立派な証拠になると思っているので、いきなりテレフォンアポインターが来たという状況ではなく、きちんとその企業を理解した上でお客様と会話する必要があると思っています。インサイドセールスがしっかりと事前準備を行って情報武装をした上で、何のためにコールをしているのかを、プロダクトアウトではなくお客様本位で考えることで、ソフトバンク自体も変革に取り組んでいることを理解していただけると思います。ブランディングと、マーケティング、インサイドセールスの三位が綺麗に回った上でフィールドセールスに渡していくことが重要ですね。 

その先に、今度は需要がIoTAIなど様々なテクノロジーに広がってきます。そうすると、もともと我々が生業としてやっていた通信サービスについて、お客様への効果的なアプローチやサポートの方法を考えなくてはなりません。そのため、これからの課題の一つとして取り組まなければいけないのは、カスタマーサクセスですね。受注後のお客様とのコミュニケーションの在り方を再設定しなければいけないと思います。 

今までのカスタマーサポートやカスタマーサクセス、いわゆる受注後の活動のメインはフィールドセールスであり、人が中心だったと思います。それがおそらくコロナ下において、売るというフェーズに関しては、様々な企業でインサイドセールスを導入しよう、デジタルマーケティングを強化しようという動きが広まってきたと思います。そうして顧客基盤が増えた時に、そのお客様と正しくその先もずっと付き合い、ライフタイムバリューを向上させるためには、今まで人が中心だったところもある程度チームで回していく必要が出てきます。当然人も入りますが、マーケティングテクノロジーや、ウェビナー、メール、ホワイトペーパーなど様々なツールを使いながら、トータルでお客様をサポートしていく体制を取る必要があります。我々もこの課題に取り組み始めています。

 

「一緒にビジネスをやっている」というお客様本位のマインドへの変化 

―今後は原田さんの組織もいっそう拡大していくのでしょうか? 

組織を拡大するのか、横にいる複数の組織が連動してやるのかというのは、やり方次第だと思います。ただ、私見では連動していくのだろうと思っています。要はインサイドセールスもデジタルマーケティングもそうですが、一部の人たちだけがやっているものではないと考えています。ビジネスの単なる一パーツを切り出せばたしかにインサイドセールスですが、企業活動としてはつながっているんですよね。 

例えば、マーケティングコミュニケーションのチームが、それはセールスの仕事ですよ、といった区別をしてしまう世界は絶対にないほうが良いですね。我々が民間企業である以上、会社はお客様がいて初めて成り立っているのですから、そこはセールスのセクションですよというよりも、一緒にビジネスをやっていますよというマインドにならなければいけません。この意味では、従来のようにセールスは物を売る人で、バックオフィスの人は何をやる人で、というようなかたちではなくて、みんながお客様を中心にした考え方にならないといけないと考えています。 

そのためには、様々な部署に対して我々が、例えばマーケティングツールの話や動き方についての話をすることで、あ、そうか、そういう考え方があるんだね、というように少しずつ理解してもらえる人を増やして、総和として対応するかたちにならなければならないと思っています。そうでなければ、いつまで経っても「Aさんがいるソフトバンク」になってしまう。この状況では、Aさんがいなくなってしまうと、サービス品質が落ちたといわれるのが、おそらく今までのB to Bの世界だったと思うのです。そうではなく、「ソフトバンクにAさんがいる」というかたちに変えていかなければ、やはりもうこれからは生き残っていけないのではないかと思います。 

当然、AさんAさんらしさを、自分なりのものを出すということはインサイドセールスの世界でもどこの世界でも前提としてありますが、すべてを個人の能力に依存したかたちで進めるのは違うと思っています。 

―そうですよね。民間企業として利益を上げる必要がある以上、マーケティングは、どちらかというとバックオフィスのような意識を持たれる方が日本だと多いですよね。 

セールス部門に限らず、お客様がいるから我々が存在しているということです。今まで、コロナ前の状態でバックオフィスの人たちがバックオフィスでいられた理由というのは、お客様と対面して動くのがフィールドセールスの人たちだけで良かったからですよね。その人たちにすべての責任を任せていたというのが、おそらく今までの日本企業でした。 

これが、コロナというパンデミックで人の動きが制限されるようになった瞬間に、今までは商業活動の主体がサービス提供側企業だったのが、お客様が自分で検索し始めるというかたちで、主体がお客様に移動してしまったんですよね。そうなると、例えばコールセンターでコールを受けている人、マーケティングでwebサイトを担当している人、プロモーションのために広告を打っている人、これらすべてが直接お客様と対峙していることになり、今までフィールドセールスがやっていた業務を分散してその人たちも負うことになっているんですよね。それを理解しているかどうかでかなり差が大きいと思います。私は、日本企業がそれを理解しなくてはいけないフェーズに来てしまったんだなと思っています。これがコロナによってもたらされた一番大きな転換点だと思っているんです。 

バックオフィスの人、例えば総務の人で私は表に出ませんよという話だとしても、実際には一歩外に出ると、ソフトバンクの社員として外から見られる人になるんですよね。今までは見えなくてもいい、気にしなくてもいい世の中でした。しかし、ソーシャルメディアなども含めて一般の人たちが情報を発信できる経済活動の中では、バックオフィスの人も「For the customer」で動かなければいけないし、そこに対峙する各フェーズの人たちも、お客様ってそういうニーズがあるのか、お客様ってどうなんだというように、全部お客様主語で動いていかなければいけないですね。 

今後は、例えばインサイドセールスであれば、単に案件を作ればいいのではなくお客様にとっての正しさが求められて、こういうコミュニケーションがあった、これはどうもその前にあるマーケティングが違うぞ、この後ろにいるセールスの人にはこういう内容を載せなければいけないぞといった話を、CRMなどのシステムにしっかりと記載して、顧客情報をちゃんと蓄えて、それを誰もが同じように見て、理解して動けるようにしなければいけないと思っています。 

法人マーケティング本部の目指す姿 

―すでに未来の話にも入ってきていますが、原田さんや法人マーケティング本部全体の目指す方向やありたい姿、あるいはそこに至るまでまずこういうことから手を入れておこうという考えなどをお聞かせいただけますか。 

私個人の意見としては、自分はどこどこの役割だからここしか知らない、という状況を作りたくないですね。インサイドセールスを含めて、仕事を分業しているのではなく、専業にして、スペシャライゼーションして知見を深くしているだけのことなので、周りでやっている仕事は当然知らなければいけないと思っています。組織としては、今まで蓄積した知識や能力の延長線上に未来があるわけではないかもしれないという世の中を前提にして、それぞれが自分で学んでほしいと思います。常に学習して自分たち自身を進化させるというように、学ぶ組織でありたいですね。 

―原田さんはずっとそのようにお考えですよね。自律する、学ぶきっかけを作る、自分に気付きを与えるという点を重視されている。 

雑談ですけれども、今回のパンデミックは、地球に隕石が落ちて急に氷河期になったとか、恐竜が絶滅したのと同じレベルだと思っていて、今までの常識が完全に壊れたと思っているんです。今までであれば、例えば会社に入って20年ぐらい仕事して40歳ぐらいになったら課長ですよねという考えだったのが、そうではなくなったと思っています。それこそGIJさんではないですけれども、そういう外部の人たちと一緒に学んで自分のやり方を持っている人は、例えば試合に出た経験が不足しているなら、その経験さえ得られれば、場合によっては20代の人間でも40代を超えられるというくらい、今は大きな端境期を迎えていると思います。 

GIJさんにお願いしようとしている企業さんは、何のために取り組むのかという点にきちんと立ち返ることが重要だと思います。それには二つの局面があって、一番初めに考えなければならないのは、マーケットが変わっているという点です。もう一つは、自社がどうあるべきなのか、そのマーケットに対して自社がどう思われたいのかという点ですね。インサイドセールスを取り入れたらいいと考えたのならば、取り入れたらいいと思います。ただし、新しいやり方を取り入れた場合には、常に自分たちの中で進化させて、血となり肉となり骨となるよう、自分たちで使えるようにしていかない限り、形式上は取り入れたけれどそれで?といった結果になってしまうと思います。 

―すごく多いですよね。 

変えていかなければいけない、常に進化していかなければいけないというのは、このコロナで生まれた新しいムーブメントだと思っています。

 

変化し続けようとするソフトバンクのカルチャー 

―ソフトバンクのカルチャーや、トップがそうだからといったこともあるとは思いますけれども、ソフトバンクは変化に適応できていると思うんですよね。あるいは、もっと言うと、自分たちで先読みして、準備ができていたから対応できたのではないかと思うんです。当然、コロナでこれだけの変化が起きるとは誰も思っていなかったと思いますが、その前の積み重ねがあるから迅速に対応出来ていますよね。 

そうですね。例えばiPhoneが出た時に、これからこういったデバイスを浸透させていこうということで、一気にペーパーレス化に取り組みました。2011年の東日本大震災のときは全社でクラウドサービスを使い始めていた頃で、共有のスプレッドシートでお客様の被害状況を把握するなど、リモートワークに対応できました。このように様々なトライアンドエラーを経験しながら、ソフトバンクで培ってきたカルチャーが、新しいサービスや変化を世の中に先駆けて自社で取り入れてみるという姿勢です。新卒で入ってきた人を含めて、今入社している社員がみんな変化に強いのかと言えば、私はそうでもないと思っています。誰しも変化は怖いはずなんですよ。だからこそ、例えばリーダーとなるような人たちが、ファーストペンギンではないですが、変化していこうぜと常に言い続けて、常に変わり続けていく姿を見せることで、周りを勇気づける存在になることが重要だと思います、根本的にはみんな怖いはずなんです。 

私も、これでいいのかなと思うことは多くあります。ただし、間違いは未来に対するチャレンジなので、間違ったら間違ったと言おうといつも自分でも言っています。同時に、間違ったことを責めるような文化だけは作りたくないと思っています。失敗しても、失敗を経験することで2度目の失敗をしなければ、成功のための1ステップになりますよね。やってみないと分からないことは、常にやらないといけない。 

ただし、やってみなきゃわかんないよねと言った時に、やみくもに想像だけで、アイデアでやるのはよろしくないことだと思っています。だからこそ、実際に取り組んでいる人のやり方を知るために、水嶋さんや様々な企業にインサイドセールスとは何なのかを聞きに行きました。どうもこのやり方は当たりらしいぞという自分の感覚を得る、さらに、どうもこういうやり方だとこういう効能があるらしいぞと理解するためには、誰々がやっているというリファレンスがあると、ものすごく楽なんです。 

水嶋さんが2000年ぐらいからインサイドセールスをやっていたのはどうしてかと紐解いていくと、日本人のハイコンテクストなコミュニケーションに対して、北米など海外はローコンテクストで、そもそも私何者です、みたいな話から始めないといけない状況があると分かってきて。そうすると、やはり海外のほうがある程度ルールベースで、プレイブックがあるという点で再現性が高いと思ったんですね。私がフィールドセールスをしていた頃は明文化されていない暗黙知が非常に多くあったのですが、ある程度のプレイブックがあり、実際にそこでやっていた人から話が聞けるとなると、失敗しない橋の渡り方のようなものが見えてくることがけっこうあって、これは楽だなと感じました。 

そこで、まずは同じようにやってみようと取り組んでいった時に、どうもソフトバンクだとこのやり方は違うという点を見つけたので、そこはソフトバンク流にアレンジしようと。例えば他の企業ではインサイドセールスは中途の人たちが入ったり、新人の登竜門とされたりしているけれども、ソフトバンクはもともとフィールドセールスにいた人たちがやるという点で真逆でした。ソフトバンク的にはKPIでかっちり管理するよりも、「頑張ろうぜ~!」といった少しウェットなコミュニケーションを含めて、日本人的にボンディングするというか、マネジメントをする方式にアレンジしていったところがあります。 

ただし、インサイドセールスが動き始めても、それと連動するはずのデジタルマーケティングやブランドPRなどが単体で動いていては全く効果が発揮できませんend to endで見てどこのポイントが良くないのかを考えたところ、下流から上流を見る感じで、インサイドセールスの上流で雨の降り方が悪いから川が下で氾濫しているぞと見えたので、上流を直しに行くということで、デジタルマーケティング側もスタートしました。今年度はデジタルマーケティングとインサイドセールスを完全に私の組織の下に入れて、上流で水を流すところから下流にちゃんと流れるところまで一気通貫で見ていきましょうという話をしていた感じですね。 

   

楽しく働くことの実現を目指して 

―なるほど、成功につながる失敗を意識して行動した結果が、最近のインサイドセールスとデジタルマーケティングの統合の動きにつながるのですね。もちろん完成形はないと思いますが、原田さんが目指している理想には何年後ぐらいに到達できそうだとお考えでしょうか。 

何年後で行けるかというより、何年後までに行かせなきゃいけないかという話でしょうね。例えば一般的に2025年問題とか、労働人口の減少など、働いている人がどうなりますか、会社の平均年齢はどうですか、女性の活躍はどうですかといった、様々な環境の変化に伴って変わらなければならないこともあると思っています。瞬間ですぐやらなければいけないことは、少なくとも2,3年のうちには出来上がっているのが当たり前なんだろうという気がしています。 

ただし、それが出来た上でも細かなモディファイがずっと走っていくことになるだろうと思っていて、先ほどの学習の話ではないですが、その意味で言うとゴールはないですよね。ソフトバンクと付き合って良かったと言ってくれるお客様がどれだけ増えるかというのがゴールだと思っています。 

―すごく格好いい言葉ですね。 

もともとセールスのひとであれば、お客様から喜ばれたいという気持ちがすごくありますよね、本心から。そうであればあるほど、褒められたいや喜んでもらいたいという気持ちに、ここまでやったら十分だというのはないじゃないですか。その欲求に果てはないので、とことん褒められたい、とことんお客様に愛してもらえる存在になりたいですね。 

そう考えるとビジネスは、金を稼ぐとか、自分が偉くなりたいとかもあるんですけど、そうではなくて、では何のためにやっているんだっけというところに戻るんですよね。それに応えられるように、自分でやっていて楽しいからだ、と言える仕事に変えていかなければいけないので、チームマネージャーは本当に厳しいです。例えばルールベースの話は当然言わなくてはならないので嫌な役回りはやりますけれども、今のマーケティングの世界やバックオフィスの世界も含めて、ソフトバンクは世の中の人から求められていたんだなと思えるシーンをどれだけ見せられるかという点が重要です。その結果、会社へのロイヤリティも上がるでしょうし、大きなビジネスのうちの小さなピースかもしれませんが、仕事をやっている実感が出てくれれば、もっともっと小さいところから改善活動が始まって、学習する文化もできて、企業自体が大きく変わるのかなと思っているんです。 

実際にはなかなか難しいということは理解しているので、少なくとも一番お客様に近い部門からそういう意識を作らなければいけない。その意味では、我々の法人マーケティング本部という部隊は、お客様に何かしらプロモーションして、インサイドセールスがコミュニケーションを取ったり、メールマーケティングをしたり、webを見せたりと、お客様と直接対峙している部門です。だからこそ、我々の部門自体がお客様を見て、why=なぜ我々はいるんだっけという問いに対して、それはお客様に楽に便利になってもらいたいから、課題を解決するにはソフトバンクだと理解してもらいたいからだと、whyをしっかり持つ必要があります。重要なのはMQLの数でもトスアップの件数でもありません。 

お客様が、極論、ソフトバンクの製品を買わなくても、必要な情報を必要な時に提供することで、ああ、あの会社は良かったよねと思っていただければいいな、と。ギブアンドテイクではないですけれど、ずっとギブをして1回くらいテイクがあったらいいというようなレベルで、1回のテイクをやったー!と喜べたらいいと思っています。それは9回ギブをしなければいけないといった義務感というよりは、何のために仕事をしているのだっけという話に戻ってくるんですよね。 

   

インサイドセールスとフィールドセールスの関係性の変化 

―とても深い話をお聞かせいただきありがとうございます。原田さんの価値観や哲学がよく伝わりました。働くことの意義の実現というすごくシンプルな価値観ですが、このパンデミック以降ですごく変わったことですね。 

変わっていますね。インサイドセールスの立ち位置も、非常に向上したと思います。欧米型というか、中途採用の登竜門のような立ち位置だったときには、どうしてもヒエラルキーで考えるとインサイドセールスが一番下なんですよね。でも、インサイドセールス的なメソッドをフィールドセールスが使わなければならなくなってきたので。 

―セールスフォースさんのモデルがあまりに有名なので、インサイドセールスは新入社員がやるものだと皆さん思っていますからね。 

今の状況で考えれば、自分のお客様や自分のテリトリーの人たちを、自分に成り代わって、自分と同じような表現で心地よくさせてくれるというバディーがいるのはすごく大きいことですよね。コロナになって急にデジタルシフトが進んで、それではこの話法でやっていこう、ポイントとなる情報をきちんと集めてねと言っても、今までフィールドセールスは一社一社のことを調べる十分な時間を作れなかったわけですから、専門的に調べて、決まったコールまでしてくれるインサイドセールスがいたら、なんてありがたいんだろうと思います。 

要するに、フィールドセールスは四番バッターで、最初から四番だけを打てる世界になったのです。今までは一番バッターも二番バッターも三番バッターもフィールドセールスがやって、上手くいって満塁になったときに初めて、四番で満塁ホームランを打てる可能性が出て、実際に打ったら俺はすごいだろうと言っていたんですね。でもこれからの世界は、一番バッター、二番バッターはインサイドセールスがヒットを打ってくれているので、フィールドセールスは三番バッターか四番バッターとしていきなり大舞台でバットを振って、これを打ったらヒーローだという世界になったんですよね。結果としてチームが勝てばいいという前提で動いていると。 

そこだけは四番バッターのフィールドセールスの人たちは考え方を変えなくてはいけなくて、今までならソロホームランだったところが、一番、二番がいたから一発打っただけで3ランホームランになって3点入るかもしれない。しかし、インサイドセールスの人たちは、あなたが3ランホームランを打って良かったではなくて、チームが3点取れて良かったという考えで動いているわけだから、フィールドセールスでも状況によってはバントして送ることになるかもしれないというのが、このコロナで変わってきたことだと思います。それぐらい、お客様先に直接訪問できなくなったことのインパクトは大きいです。 

なかには、インサイドセールスのコミュニケーションのほうが良い場合は、フィールドセールスがギリギリまでインサイドセールス側で対応してほしい、途中から引き継いでも良くないからと頼むこともあります。その代わり、見積りや決裁などはフィールドセールス側で取るという案件もあるんですよ。 

―そういったコンセプトが実現できているところは本当に少ないですね。 

インサイドセールスはあくまでも手法なので、一番自分たちが勝てるのはどんな手法かという見方もありますが、そこにいるお客様に応じてチームプレイが必要であればやればいいし、必要なければやらなくていいんですよね。 

絶対に1人のフィールドセールスがすべてをやったほうが、顧客体験はコントロールしやすいので間違いないんです。それをあえて分けるということは、単なる分業ではなくてスペシャライゼーション、ぐっと深くまでそれぞれの人たちがやっていかないと、バトンの下手なリレーになってしまい、逆に成果が上がらないことも多いですからね。インサイドセールスはどんなスピードならフィールドセールスに上手く渡せるのかを常に理解しなくてはなりませんし、関係者はフィールドセールスとインサイドセールスだけではなく、コンペティターも、その先にお客様もいるわけですから、どのタイミングでどういう動きをしたほうがいいのか、常にインサイドセールス側が意識しながら動かなければいけないですね。 

―おっしゃるとおりですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。