進化する営業とマーケティング ~テクノロジーとセールスのあゆみ~

 

営業とマーケティングを巡る状況はテクノロジーの発達とともに変化してきました。

終わらないリスト消化や、歓迎されないアウトバウンド、購買意欲を阻害するダイレクトメールなど非効率な手法が見直され、無駄なく最適化された手法への移行が進みつつあります。
その背景にはITインフラの進展、優秀な管理ソフトウェアやクラウドサービスの登場があります。

本記事では、営業とマーケティングの現況とこれからについて概観します。

販売におけるデッドゾーンへの注目と生産性向上への志向

―販売はプロダクトと同じぐらい大切だ―

Paypal[note]電子メールアカウントとインターネットを利用した決済サービスを提供するアメリカの企業[/note]の創業者、ピーター・ティールの指摘です。
彼は著書『Zero to ONE』において、セールスの重要性を説きました。
主張の要点は以下の通りです。

 

1.小さな違いを追いかけるより大胆 に 賭けた方がいい

2.出来の悪い計画 でも、ないよりはいい

3.競争の激しい市場では収益が消失する

4.販売はプロダクトと同じくらい大切 だ

今日ではレッドオーシャン市場としても知られるように、競争の激しい市場では収益を上げにくいことは周知の事実です。
一方、それまでの販売戦略を振り返ると、顧客のターゲットは大企業、あるいは消費者に集中し、中小企業に向けた戦略が席を空けているという状況でした。販売のデッドゾーンです。

 

 

いわば中小企業向けの市場がブルーオーシャンとして控えているにもかかわらず、有効な手法が見つからずにいたというわけです。

一方、中小企業の立場で営業、マーケティングを俯瞰すると、中小企業側からのアプローチにも課題がありました。
2012年の段階で、約8割の企業が営業力の強化を課題としているということが明らかになっています。

 

 

中小企業向けの営業はコスト比の収益率が悪く、中小企業側の営業も人手などリソース不足によりやはり収益率が悪い。
これらの課題を解決する共通のカギは生産性の向上にありました。

生産性を向上させるために必要なフレームワークとして、営業プロセスの可視化、KPIのマイクロマネジメントが導入されます。
また、ITインフラの発達によりインサイドセールスやマーケティングオートメーションが徐々に普及し、人手不足を解消する効率的な営業と、コストをかけずにデッドゾーンまで行き届く広範かつ細やかなマーケティングが可能になりました。

セールスモデルの刷新は企業の規模にかかわらず、伸び悩む企業に恩恵をもたらすものだったのです。

 

KPI緻密化の弊害

しかし、客観的な指標を管理する上で新たな問題が浮かび上がります。
KPIと行動指標管理の徹底した管理、緻密化と可視化の極大化がかえって非効率な状況を生み出したのです。
極大化の例を挙げましょう。

 

KPI ダッシュボード

数十のKPI・行動指標
KPI・行動指標のポイント制(スコアカード)

 

スコアカード ランキング

社内ランキング競争の奨励

 

社内監視システムの強化

SFA入力項目の詳細化
監視のための報告業務の増加

 

成果報酬システムの連動

ボーナスシステムがKPIとスコアカードの結果を反映させるために複雑になる
予算の達成度の比較
ボーナスの源資配分を行うため相対評価(支店間、部門間、チーム内部)になる

 

管理を細かくおこなうことの弊害は次のような形で顕在化しました。

 

スコアカード、行動評価の詳細化

集中すべきポイントがぼやけてしまう
管理するための労力、コストが膨らみ組織が肥大化する

 

社内競争の熾烈化

人事評価とボーナスもランキングで決まるため、競合との競争よりも社内評価が優先される
予算の達成率を調整できる人材が出世する

 

新しい分野に挑戦することが困難

大胆な発想よりも、確実に結果を出すことに目が行く
環境の変化を先取りするよりも、目先のゴールを達成することが優先される

 

新たなセールスモデルへ ~アジャイルあるいはコラボレーティブセリング~

モデルの見直しはIT業界が端緒を開きました。
なぜなら、マーケットの在り方とルールを根底から変える革新的サービスが登場したからです。

具体的にはAmazonのAWS[note]Amazon Web Service。広範なカスタマイズと緻密な料金体系でクラウド化されたサーバーサービスを提供。[/note]、Appleのモバイルアプリとスマホの普及、Google(現アルファベット)のビジネス向けサービスの登場です。

 

 

また、対抗して従来のIT業界をけん引してきたMicrosoftが再興を図り、企業文化の変革を進めます。
掲げられた目標は以下のようなものでした。

 

社内競争より協力と協創の促進
KPIと行動指標の簡素化と位置付けの低下
スモール・チームと多様性の維持

 

こうした状況で、上述の先進的IT企業における効率化のモデルをセールスに応用し、アジャイル型セールスモデルやコラボレーティブセリングといった新たな販売戦略を採用する企業が成功を収めるようになったのです。

 

終わりに ~インテリジェントセールスの展望~

これまで述べてきた営業・マーケティングの進化は全てアメリカに始まりました。
日本における普及はまだまだこれからと言えるでしょう。

しかしながら、一部の先進的な企業は積極的に新しいモデルを採用し、成果を上げています。
既に、これからの潮流を見据えた次世代の販売戦略を採用する企業も現れています。

それは営業・マーケティングにおけるAIの実用化、インテリジェントセールスです。

インサイドセールスの採用や協業の推進においてボトルネックとなっていた煩雑な事務処理、定型業務を自動化するのみならず、売上予測やパイプラインの創出までもAIが活躍する時代が迫っているのです。

これから営業・マーケティングの改善を試みる企業は、コスト減、経営資源の有効活用、効果の可視化を実現する豊富な選択肢を目前に並べられています。
新たな仕組みの導入に向けて、自社の意識改革を念頭に置きながら、最適な戦略を選択することが求められます。

 

関連記事

PAGE TOP